2011年11月29日火曜日

不動沢、果てありの岩稜(敗退)

11月28日(月)は、自分のクライミングでミズガキ不動沢へ。
今回は、K口さんと。
当初、1泊2日で雪山シーズン初めの予定でしたが、日常の疲労&準備不足で挫折。
日帰りで、ミズガキのシーズン納めに行って来ました。

で、今回は易しめということで、岩稜登り。
半日コースでしょうとタカを括っていましたが、結果はまさかの時間切れ敗退。
なかなか面白いルートなので、今度ちゃんと登りに行きたいと思います。

取り付きを探すのに2時間以上かかり、結局登り始めたのは12時過ぎ。
クラックに土が詰まっており、それを掻き出しながら登るのに時間が掛かったり。
しかも、前半部分はヤブも多いので、ライン取りにも迷いながら。

岩稜、甘くみるべからずですね。

具体的なルート
<果てありの岩稜>(たぶん合っていると思う。違ったとしても、面白いからO.K.)
1P目(K口リード、30m):木登り&歩き。かなり微妙なバランスを強いられる。
2P目(石田リード、55m、体感5.10a):スラブ&クラック。掃除したら5.8くらい?結構苦戦。
3P目(K口リード、15m、体感5.8):小さな岩峰登り。岩が欠けて、リードが少しフォールするが、無傷。
4P目(石田リード、30m、体感5.8):第1ハイライトっぽい急なリッジ。

そこから先、第2、第3のハイライトが見えておりましたが、ちょっと時間的に無理そう。
2人とも気合い不十分につき、大した悔しさもなく敗退・・・。

ちなみに、泥の掻き出しにナッツキーが大活躍!
無かったら、1ピッチ目も2ピッチ目も登れなかったでしょう。

次は、気合い入れて行きましょう。

マルチピッチ体験講習は、単なる体験ではない?

11月26日(土)、27日(日)は、三ツ峠にてマルチピッチ体験講習。
今回は、クライミング歴4ヶ月の男性OSさん、クライミング歴5年にしてリードに目覚め始めた女性IGさん。

2人とも、クラックやマルチピッチに興味がある中で、まずは総合的な体験をオススメした次第です。
マルチピッチは、大きな壁を登るための技術!
スポーツクライミングとは異なる、そのダイナミックな魅力に興味を持つ初心者も多いもの。

その一方、1人前になるには、やる気満々の学生山岳部員でも1年から数年の経験が必要です。
そんな先のこと、見据え続けて練習するのは難しいですね。

それに対して、最近はマルチピッチ体験講習を積極的にオススメしています。
やっぱり、一度興味を持った人が諦めてしまうのは、インストラクターとしては悲しい!

そういったことを減らすべく、効率的な講習はもちろん、モチベーションの上がる講習を心がけていきたいと思っております
体験講習ではリードは行わず、登りながら細かいロープワークを解説していきます。

フォローは全くの素人さんでも可能だったりしますが、「こうすると楽」みたいな小技は沢山あります。
例えば、ダブルロープのシステム、コール、回収の方法、ギアを落とさない方法、セルフビレイの取り方各種。
体験とは言いながら、講習することは山ほどあるので御安心ください。

で、取り付きで説明してから実践1本。
また、取り付きに戻って講習。
そして、また実践1本。
そして講習。そして、また実践1本。

これを繰り返して、段々と効率的なやり方を身に付けて頂きます。
来年は、是非ともマルチピッチのリード講習を受けて頂きたいですね。
「冬山はまだチョット」というお2人ですが、それなら冬はクラックが良いかもしれません。

なんせ、クラックも冬山も初期投資が10万円!
1つ1つ始めた方が、落ち着いて取り組めるかもしれませんね。
具体的な講習内容
初日
・テーピングの仕方
・ハンドジャム、フィストジャムの方法
・アルパインクイックドローの作り方
・ギアラックの整理方法
・カムの回収方法(ナッツキーの使い方)
・ダブルロープのシステム
・コール(コールなしの流れ)

一般ルートから、頂上までトップアウト

・ロープを背負う畳み方
・インクノット(クローブヒッチ)の作り方
・半マスト(ハーフクローブヒッチ)の作り方
・カムの原理と間違ったセット
・リングボルトの強度

テントにて就寝

2日目
草溝ルートから、頂上までトップアウト

・チムニーでのザックの処理
・メインロープを使った、ピナクルの利用方法
・フットジャムの仕方
・コールなしの利点
・カウテールの作り方

中央カンテを登り、懸垂下降

・フォローの振られ止め
・懸垂下降支点の使い方

その他にも、質問に応じてリードのことなど、色々と話しました。
こうして振り返ると、ビックリするような情報量ですね。

お2人も消化不良という印象なく、お元気なことです。
とはいえ、どのくらいイメージできたでしょうか?

春に、また実践しましょう!



2011年11月25日金曜日

独学オンリーの限界?

11月24日(木)の夜は、ランナウトにて初心者講習。
今回は、三鷹の女性SMさんと、その山岳会仲間の男性NKさん。
SMさんは、久々の講習復帰。
NKさんは、クライミング初めて半年です。

2人とも、山岳会で一通りのことを学ぶ環境はあります。
そんな中、より安全な技術、より効率的な成長を望んでの講習参加。

講習は有料ですから、その一歩がなかなか出ませんよね。

しかし、先日ファーストエイドの講習を受けてみて再認識したこと。
独学オンリーは、やっぱり見当違いの方向に行きやすい・・・。
そして、モチベーションも下がりやすい。

まして、レスキュー技術は、実践する機会が少ないだけに尚のことです。

ムーブ講習を、「ちょっと不器用かも」という方にオススメしているのと同じですね。
成長の折々で、プロを利用していただくのも有効です。

具体的な講習内容
・ダブルチェック(環付き、通し、折り返し)
・トップロープのビレイ(NKさんのみ)
・ATCを落とさない方法
・レスト(チョークアップ)
・ネコ足
・腰を壁に近付ける(SMさんのみ)

NKさんは、スキーも講習と自主練習を繰り返して覚えたとか。
クライミングも素晴らしいモチベーションで、先々が楽しみです。

専門用語はやっぱり便利(マッチ、持ち替え、飛ばし、中継、クロス)

11月24日(木)の昼は、ランナウトにてムーブ講習。
男性ANさん、女性KDさんペアの、第2回です。
クライミング中、「右手、左手、右手、左手、・・・」と順々に手を出すとは限りません。
大きめのホールドを両手で持つ(マッチ)、片手で持つくらいのホールドをもう一方の手で持ち直す(持ち替え)、いま上にある方の手を続けて出す(飛ばし、中継)、などの方法もあります。

これらほとんど、初心者が無意識に行うようなものです。
ということは、これを教えることは一見意味がないように思えます。

が、経験上、これを言葉として覚えるってことに意味があります。

例えば、
・さっきは持ち替えしたけど、飛ばしでやった方が楽かも。
というように、
専門用語を使うと話が早く、ムーブの検討がしやすいものです。

一般的に・・・
初心者同士でアドバイスし合うのは効果が低く、中級者同士ならば効果が高いものです。
中級者の方がムーブの概念を理解しているし、それを伝えるための専門用語を持っているからです。

さらに、初心者はホールドを名付けて覚えたりすることも出来ません。
ときどき、初心者同士のムーブ検討会を聞いていると、まどろっこしく感じちゃうものですよ。

初心者同士でも、自分が感じたことが正しいことも多く、それを共有できないのは勿体ない!
やっぱり、専門用語は便利なのです。
具体的な講習内容
・ネコ足(復習)
・肩の脱力(復習)
・マッチ、持ち替え、飛ばし、中継、クロス、といった手順の名称

次回は、腰を壁に近付けて頂きましょうか!

スリップストリーム、ウィルダネスファーストエイド(2011、アドバンスコース)

11月15日(火)~23日(水)で、富山県の立山で、野外救急法の講習を受けて来ました。

この講習を受けるのは3年目になります。
どんな講習かは、昨年詳しく書きましたので、まずはそちらを。
さて、今年はとりわけ長かったです。
というのも、昨年までは5日間(50時間)コースだったのに対し、今年は“アドバンスコース”と銘打った9日間(90時間)コース。
とはいえ、5日分は重複しているので、復習です。

しかも、この会社(スリップストリーム)の方針で、復習コースは初年度のみ無料。
アドバンスコースを受ける際も、5日間コースの復習に参加するのは無料。

まだまだアウトドアのプロ向けの感は否めませんが、内容的には超オススメ。
以下は、内容。

まず、ファーストエイドで問題なのは診断です。
我々は、医療には詳しくありません。
しかも、野外ではレントゲン、聴診器、などの機材は一切ありません。

そんな中で、問診、触診、それから患部を見る程度で怪我の具合を大雑把に判断します。

例えば
・下山で足首をやってしまったのなら、骨折か、軽い捻挫で痛そうなだけか?
・大滑落や落石に当たった場合に、脊椎損傷か、動かしても平気な状態か?
・全身を打って痛みで悶絶している場合などに、骨折で固定が必要な場所はあるか、打撲か?

確定的な診断は出来ませんが、山での応急的な診断はありがたいことです。
なんせ、「怪我をして自力歩行or自力搬送できる状態で、なんでもかんでもヘリコプター要請!」
というのは現実的ではありません。

むしろ、「動かして大丈夫かなあ・・・」と不安を感じつつ、自力下山した経験は僕にもあります。
そこに対して、応急的な診断は大きな目安になります。


つまり、この講習では単なる応急処置ではなく、事故発生から診断~下山の計画~応急手当、という一連の流れを練習します。 
この練習方法は、傷病者役と救助者役の2人組で本格的(?)に演技を混じえて行います。
この方法を、シナリオトレーニングというそうですが、実は結構楽しいです。

例えば、以下の流れは推理ゲームっぽい。
・事故発生状況&本人が訴える症状から、懸念される大きな傷病を頭に幾つか思い浮かべる。
・問診、触診の中で、可能性を排除していく。
・緊急性が高い傷病の可能性が高ければ救助要請、ほとんど可能性がなければ登山続行or自力下山の選択。

これに、リアリティを出すための演出や演技が加わり、救助者役を悩ませます。
練習ながら、相当アドレナリンが出ますね。

さて、50時間では事故(怪我)が中心。
90時間では、体調不良(病気)を加えて練習します。
最後の数日は、ひたすらシナリオトレーニングを繰り返し、頭を整理していきます。

まだまだ自信はありませんが、単なる机上学習よりは遥かに勉強になります。
自力練習が難しい内容だけに、来年も参加したいと思っています。

2011年11月19日土曜日

クラック講習の募集

城ヶ崎クラック講習の参加者募集です。
12月23日(金)、24日(土)。
クラック初心者可。

現在参加者1名。
あと3名くらい可。

また平日に関しては
・12月1日(木)、2日(金)の城ヶ崎クラック

・12月21日(水)、22日(木)の谷川岳雪上訓練
の両方についても同行者募集です。

当塾では通常、1〜数名でのプライベートレッスンの申し込みのみで運営しております。
今回は、一名で申し込んだ方が「マンツーマンを希望するわけでない」という話で、参加者公募になっております。

「誘い合わせる仲間は居ないが、マンツーマンは高いので手が出ない」という方は、このような機会を御利用ください。

ちなみに、ただいま富山にて野外救急法の研修中です。
本日は、9日間の滞在中で真ん中の日。休息&自主練習です。

2011年11月14日月曜日

三ツ峠でマルチピッチリード講習(残置無視のススメ2)

11月12日(土)、13日(日)は、三ツ峠にてマルチピッチ講習。
常連女性TZさん。今回も、リード練習と参ります。

最近、ミズガキに通う私ですが、初級者の方が同じようなクライミングを実践できる場所。
それが三ツ峠です!

先人が残した残置支点がありますが、これは使いません(残置無視)。
すると、クラック、岩角、潅木などあらゆるものが支点として見えてきます。

そして、壁の弱点となるクラック、凹角、リッジがラインとして再認識できます。 
10年、20年前・・・。
「初級クライマー=残置を追いかける」、「上級クライマーだけが残置の無い未踏の壁に行く」という時代があったようです。

日本全国入門ルートが残置だらけになってしまい、初級クライマーは本当のアルパイン技術ではなく、残置だらけのマルチを登る力のみが求められた時代です。
現在は、クラックやアイスクライミングブームも合わさり、初級者でもプロテクション技術が身近になりました。
今こそ、皆が自分の力でクライミングする時代がやってきつつあります。
残置ではなく、自分のプロテクションで!
そして、出来る範囲でフリークライミングに拘りつつ。
欲を言えば、三ツ峠から残置がもっと減れば良いと思います。

やっぱり、無視というのは根性も要りますよ。
しかも、「良いルートが良いクライマーを育てる」というのも感じます。

現在。
“注文の多い料理店”、“スーパーレイン”が初級から中級へのステップアップ目標になり、意識改革の良いきっかけになっているようです。

できれば、三ツ峠が変わり、初級者レベルから文化が変われば嬉しいですね。

でも、三ツ峠では10年、20年前の文化の方々もたくさんおり、まだまだ時期尚早?
それとも、誰かが強引に抜くことによって時代が進む?

このあたりの議論は、古くから繰り返されて来たことです。
経験上、「自力で登った感」をアピールして楽しさを伝えていくこと、残置の無いルートを数多く誕生させること(既成ラインの残置を抜くこともある)のバランスが大事なんでしょうね。

残置問題はさておき、TZさんは周りに目もくれずガンガン登るのみ!
プロテクション技術、ロープワーク、ともに自信が付いて来ました。

まだまだ不慣れも目立ちますが、全ピッチをリードしたのは立派ですね。
カムばかりがプロテクションとして目立ちますが、下のようにピナクル(小さい岩塔)も使えます。
アルパインクライミングは、総合力が試されますね。

お見事な支点でした。
具体的な練習内容
<初日>
・中央カンテのラインで頂上までトップアウト(オールリード、オールフリー)
・草溝ルートで、1ピッチだけリード練習

テント泊

<2日目>
・草溝~頂上までトップアウト(オールリード、1ヶ所A0を含む)
・草溝ルートで、途中から敗退する練習

<講習した小技集>
・3点以上でのビレイポイント構築(固定分散+バックアップ、など)
・ピナクルの利用
・浮いている岩のチェック
・プロテクションの間隔(難しくなる直前に取るのが理想、簡単なときはバチ効きのものだけを時々取る、など)
・カムが歩きにくいようにセットする(奥開きに注意)
・プロテクション周辺を登るときは、ヌンチャクを丁寧に扱う(カムが歩いたり、ヌンチャクが変な向きを向いたりするので)
・アルパインクイックドローを片手で作る方法
・ギアラックなどをビレイ点に掛けて体力温存する
・リード中におけるクライムダウン敗退時のコツ

ついに、Ⅳ級がリード出来るようになりました。
次は、冬の城ヶ崎でクラック講習!

山岳会で冬山も行くようですし、順調な成長です。

ルートは気にせず、ラインを登る

11月10日(木)は、自分のクライミングでミズガキへ。
今回は、ティミーこと青木くんです。
彼とは、アラスカ以来で組む状態。
K2の最年少記録で有名な彼ですが、現在はクライミングジム“スポーレ”で店長をしながら登っております。

持ち前の身体能力、筋トレ好きが極まり、最近はスポーツクライミングの調子がウナギ登りだとか。
で、今回はミズガキの中でも、記録を聞かないラインを登って来ました。
どうやってそのラインを見付けたかと言うと、2週間前に来たときに「あそこ、登ったら面白そうじゃない?」という話になったからです。

この手のクライミングをやっていないと、分かりにくいでしょうね。
例えば、下の写真を見てみましょう!(今回登った岩の対面にある岩壁)
壁のスケールは、およそ150mくらい。
ロープで言うと、5ピッチくらい登ると完登出来る計算でしょう。(蛇行や短めに切ることも考慮に入れて)

この中で、下から上まで登れそうなラインを目で探します。
真ん中には、大きなチムニー(体が入るほどの大きさの割れ目)が目に入って来ます。
そこを「コエー!」と言いつつも楽しそうに登っている自分の姿が思い浮かんだら、バッチリです!

一般的な登山では、最も易しいラインから頂上を目指します。
山そのものを、自然の要塞と見なしたとき“最も易しいライン”のことを弱点と呼びます。
登山は、登頂が最大の目的!
なんにせよ、弱点が最優先です。

同じく、クライミングでは壁の中の弱点を突いて登頂を目指します!
とはいえ、クライミングは一般登山以上に過程も楽しみます。

壁の真ん中に一筋のヤブが走っているより、一筋のクライミング対象が走っていた方が、クライマーの興味をそそるのです。

そして、その対象はクラック・凹角・リッジなどで、岩登りの中では弱点と呼ばれる形状です。

さて、さっきの写真に戻ると。
あとは、そのチムニーに下から辿り着けるか、チムニーの上部は頂上に登れそうかもチェック!
これで、7割方勝算が立ったなら、あとは後日チャレンジしに行くのみです。
ただ、今回。
実は、狙ったラインとは違うところを登ってしまいました(笑)。

上部は、あのラインを登ろうと思って取り付いたら、その右隣の易しいラインに入り込んでしまって、割りと簡単に頂上へ。
そっちが弱点ですからね。
登るうち、導かれてしまいました。
あとは、頂上からの景色を堪能。
下降は、何とか当初目的のクラックだけでも登ろうかと探検気分。
四苦八苦で、下の写真のクラックには辿り着きました。
が、あまりにも難しそう(危険そう)で、見学だけに終わりました。
自分の目で見て登るクライミングは、当たり外れもありますね。
ただ、拍子抜けだったと言って、悲観することはありません!

探検気分は面白いし、登るうちに次々と周りの岩のラインが見えてきちゃうのです。

ミズガキは、自然条件こそ低山です。
が、内容的にはアルパインクライミングと言って遜色ないと思います。

具体的に登ったライン
・カンマンボロンの右端
1ピッチ目(5.9、15m、石田リード):ジャミングが効くワイド。かなり風化している。
2ピッチ目(5.10d、15m、青木リード):垂壁~薄被りのフェース系クラック。風化したスタンスが危うく、ついつい力が入ってしまう。めちゃくちゃパンプした。
3ピッチ目(5.7、50m、石田リード):チムニー状ルンゼで高度を稼ぐ。部分部分、小悪い。
以降は、ロープを付けてはいるが、ほとんど歩きで頂上。

全ルート中、残置ハーケンも2本あったので、昔の人も登ったんでしょうか。

下降は、当初目的のクラック探しの探検。
3時間くらい掛けて、行きつ戻りつしながらの下降。

取り付きに戻ってからは、その他の岩場の偵察巡り。
次回は、もう来年でしょうか?
楽しみです。

2011年11月9日水曜日

スタンスを記憶する

11月8日(火)の夜は、ランナウトにてムーヴ講習。
今回は、常連女性TZさん。

スポーツクライミングでは、ほとんどの場合、スピーディーに登ることが重要です。
理由は単純明快!
腕や指の疲労(パンプ)との戦いだから、疲れる前に進みたいのです。

ただ、初心者に対して、私は「スピーディーに登ること」をあまり強く勧めません。
なぜなら、スピードを意識するあまり、足置きが雑になったり、1番楽な動きを探すことを忘れがちになるからです。
つまり、これを教えるのは、"丁寧さ"がある程度癖になってきた段階の人です。

それでも、速く登ろうとすれば、自然とミスの可能性も大きくなります。
だから、ついついその場で探ってしまう!
(「大事に行こう」とする)
とはいえ、結局のところ疲労で落ちてしまうなら、やっぱり決断の速度は大事です。

さて、ここまでは一般的なスピードの重要性。

これを身に付ける上で、"スピーディーに登った方が楽だ!"という感覚が1番根本的です。
これを味わってこそ、始めてスピーディーに登る気力も沸くというものでしょう。

これを実感するのは、1度登ったことのあるルートを登るとき。
そうすれば、「たしか、次はこうすると楽だった」という記憶に助けられ、スピードアップして楽に登れます。

で、この練習はもう1つ「まだ登れていないルートを繰り返しトライする」こと(R.P.トライ)によってもできます。
むしろ、その方がスピーディーに登ったり、そのためにホールドを記憶するモチベーションも沸くでしょう。

最初は、ルートの全てを記憶するのは難しいでしょう。
核心部だけ覚えてみたり、ルートを半分に区切って覚えてみたり。
もちろん、図を描いたり、表にして覚えるというのも、記憶方法としては確実です。

問題は、初級ルートで1番記憶すべきポイントが足位置だということです!
なんせ、初級者の意識というのは手に集中するもの!
が、足の位置こそがムーヴの種類を決定する要素。
このあたり、慣れてしまえば何てことない話です。
多くの中級者が、いつの間にか身に付けた技術でしょう。
が、長くクライミングをやっていても、悲しいかな、全く身に付かない人もおります。
それだけに、苦手そうな方には講習する価値はあると思っています。

具体的な講習内容
・ホールドと、そのときの足位置を記録&記憶していく。
5.10cくらいだと、やるたびに違うムーヴが可能なので、覚えるのも困難と判断。
後半は、5.11aの下部で練習。
ただし、これは今のTZさんにとって、かなり負荷の大きいムーヴの連続!
とはいえ、講習の最後には5.11aの下3分の1が、ノーテンション!
だいぶ力も付きましたね。

2011年11月8日火曜日

今月の無料体験講習会について

誠に勝手ながら、今月は日程を変更して行います。
11月30日(水)です。
時間は同じ。
昼の部:15時から
夜の部:20時から

何度参加して頂いても構いません。
どうぞよろしくお願いします。

2011年11月7日月曜日

大魔神O.S.とドハマりクライミング

11月5日(土)は、またもや自分のクライミングにて不動沢。
今回は、K島嬢と。
 さて、今回は100mクラスの壁の途中にあるクラックが目当て。
私自身は、最上部10mくらいのルート。
パートナーは、中間部にある30mくらいのルート。

ザックを壁の下に置いて、マルチピッチの準備で1日を岩の中で過ごします。
 まずは、1ピッチ目の落ちたら死んでしまうスラブを越え、パートナー目当てのクラックへ。
 これを無事に完登し、私は荷物を持って後続。
そこからは、歩ける程度のヤブ。
が、目当てのクラックは探せど探せど見つからず。
1時間くらいウロウロして、やっと20mくらい上に発見!

そこで1ピッチ簡単な岩を登って、ルートの下へ。

このルートこそ、私がO.S.(初見・一撃)したい大魔神(5.10b、O.W.)というクラック。
しかし、噂以上に短い!
実質7mか?
ちょっとモチベーション落ち気味。

でもまあ、一応は目標達成!
結構危うかったけど、短いので体力には余裕もあり。


こんなエリアにまで付き合ってくれたパートナーに感謝しつつ、せっかくなのでこのルートで何回か練習して帰ることに。

が、ここからがハプニングの連続。
専門用語連発で参りますので、楽しみたい方のみどうぞ。

まず、このルートの取り付きには台があり、それに乗ってスタートすると楽。
が、これは岩から離れているので、“台は無し”という限定を掛けるとスタートがオーバーハングしたO.W.(オフィズス)になる!
(後半部分も、薄く被っているが)

さて、被ったワイドが難しいのは周知(?)のことですが、練習の良い機会です。
さらに、「台使ったら5.10b無いよ」なんて言われても嫌ということで、リードでトライ。

しかし、1トライ目は1.5m、2トライ目は2mで体力尽きてフォール。
ほとんどボルダーですな。

しかし、このときビレイポイントにしていたキャメ6番がロープに当たってズレる!

焦って、カムをセットし直そうとするも、身体もフラフラ、頭も酸欠気味で朦朧としており、タイトセットしてしまう!
「やべっ」とは思いつつ、自分では正常なつもりでガチャガチャ動かしてしまい、挙げ句はハンマーで回収しようと叩いてしまう。

これで、いよいよカムはスタックし、回収のための時間が始まる。
そして、自分もクラクラしていたことに気付く・・・。

ワイドでのカム回収は、片手しか手が入りません。
しかも、ハングしていると全ての作業は疲れます。

パートナーと交替しながら1時間半に及ぶ回収作業。
2人ともワイドの疲労激しく、待ち時間はテラスで昼寝です。

いよいよ、最後はカムの一部を破損しながら回収完了。
このとき、時間は4時半。

以後は、暗い上、下降自体に本気モードだったため、写真も無し。

さて、このとき問題が3つ。
・大魔神には終了点が無かったので、カムで仮の終了点を作ってある。最後に、リード&フォローで回収するつもりだったが、今から大魔神を登るのはツラ過ぎる。
・あと20分くらいで暗くなるが、ここはちょっとした壁の中。下降するのも結構大変。
・小雨が降り始めているが、カッパは持ち上げていない。

どれも、想定の範囲内ですが、全部重なるとツライ!

とりあえず、大魔神ではないラインから終了点までリード&フォロー。
そこで、カムを回収した時点でヘッデン行動。
その周辺には全く下降支点になりそうなものは無かったので、ルーファイしながらさらに岩稜を進む。が、岩が濡れてしまい、かなり苦戦。
もはや、カムを決めたら即A0しながら登る有り様・・・。
スピード命です(笑)。

そこで、大木に辿り着き、やっと懸垂下降開始。
上部壁と下部壁の中間のヤブに降り立つが、下部壁を同ルート下降するのは面倒だと分かっていた。

あとは、歩きと懸垂を交えて行けそうなルンゼを下降すると、無事に取り付きに辿り着く。
取り付きで、ザックと再会してカッパの有り難みを味わう。

最後は、懸垂下降1回と登山道歩き30分で、車まで戻る。(19時30分)

車に戻った時間はそれほど遅くありませんが、真っ暗で小雨でと、久々にドハマりしました。
でも、正直言って、この手の緊張感は楽しいものですね。

ミズガキは単なるショートルートではなく、マルチピッチ的なことも合わせて楽しめるところが魅力です。
久々に、ロープワークの段取り、ルートファインディング、スピードを真剣に考えての下降。
冬山前に、丁度良い練習になったでしょうか?

具体的に登ったルート
<不動沢の不動岩>
1P目(石田リード):5.8くらいはありそうなバランシースラブ。
リードでの墜落は、死亡の可能性大。フォローでも、死亡を含めた大怪我の可能性がある。40分くらいかけて、行きつ戻りつしながらリード。

2P目(K島リード):牛乳瓶クラック(5.10c、ハンド&フィスト、一部O.W.)30mもある、素晴らしく綺麗な有名ルート。R.P.

ここで、ヤブ混じりの緩傾斜帯に出る。

ロープを出したり、しまったりしつつ、上部壁の色々なクラック見学。
1時間くらいで、目当てのクラック発見。

・大魔神ルート(5.10b、O.W.):O.S.ただし、後の台は使用。
その後、限定して遊ぼうとするも、敗退。

そこからの脱出行。
おそらく、天国への階段というマルチルートの最上部2ピッチ分くらいを登ったことになるのだと思う。

色々あった一日でしたが、それでもなお、被ったワイドの難しさが印象に残りました。

リハビリクライミングのトレーナー代わり

11月4日(金)の昼は、ランナウトにてムーブ講習。
今回は、常連女性のKKさん。3日前の越沢バットレスからの、連続受講です。

KKさん、実は膝を痛めており、今は出来るムーブに制限があります。
独りで練習していたら、きっと30分で帰ってしまうような状態です。
普段の調子が出ずに、つまらないですからね。
気持ちは、よくよく分かります。

しかし、そうやっていると貴重な練習の機会が減ってしまいますよね。

そこで、本日は私がトレーニングコーチ代わり。
膝に負担の掛からないムーブを選んで、回数を繰り返す練習。
こういう練習は、独りじゃ飽きます!

さらに、初心者の場合はそういうトレーニング方法自体を知らなかったりするので、講習も有効でしょうね。

具体的な練習内容
(全てトップロープ)
・5.6~5.8くらいのルートを、フォームのコツを思い出しながら10本くらい登る
・ダイアゴナル、バックステップのフォームの復習。同じく10本くらい。
・ロープの畳み方をスピーディに行うコツ
・岩場での終了点作業の復習(質問に応じて)

どうやら、インエッジで足を置いたり、フロントエッジで細かいスタンスに置くだけでも、膝が痛いようです。
つまり、正対系のムーブは、ほとんどムリ!

こうやって、どのムーブだと体が痛いのか知ること、意外と大事です!
まず、リハビリ中は、そのムーブを避けて練習するべきだからです。

もう一点、それが自分の体で力が入るポイントを知る手助けにもなります。
なんせ、「クライミング中は必死すぎて、自分の体のどこの筋肉を使っているか分らない!とにかく、腕が疲れます!」というのは、ほとんどの初心者が通る道です。

だからこそ、こういう機会に腕以外の重要性を実感!
怪我で、クライミングが上手くなる人もいるくらいなのです。

ミズガキ、不動沢でのクライミング

11月3日(木)は、自分のクライミングでミズガキの不動沢。
今回は、富士山仲間と、日本最強のオバチャンクライマーと行ってきました。
さて、今回行った不動沢。
ワイルドを絵に描いたようなクライミングエリアです。
未発表のクラックが多いのもたしかですが、発表されたクラックも自然に還りつつあります。

終了点があるかないかは、下から木があるかどうかで判断。
登ってみたら土だらけという可能性も否めません。

しかしながら、クライミング内容は最高です。

・100mクラスの壁が目白押しなのに、人は少ない。
・1ピッチで40mあるような充実感のあるルートも存在。
・渓谷美に囲まれてのアプローチ
・自力で登った感が最も高い、クラックとマルチ
・ルート図集に載っていなくても、登れるラインがどんどん目に付く
・技術的にも興味深いワイドクラック主体!
 さて、今の項目で「そりゃ面白そうだ!」と思う方。
あなたは、相当マニアです。

というのも、このエリアが発表された当初は、見向きもされなかったとか。
理由としては、
・クライミングの流行がクラックからハングしたスポーツクライミングに移る瞬間だったこと
・当時、ワイドクラック用の支点が今よりも悪く、本当に難しかったこと
などを耳にします。

でも、今はそのどちらも終わり、不動沢はクラックの宝庫として蘇ったそうです。
とはいえ、まだまだ人も少なく、完全にプライベートクライミングが楽しめます。
 といいつつ、ワイドクラックの敷居の高さ、終了点の無さ、なんかを考えるとやはり中級者以上のエリアでしょうね。
講習生の方々も、いつの日か来て欲しいと思っております。

「1ピッチのルートでは、トップロープリハーサル禁止!」
というくらいの気概があれば、低いグレードでも十分に楽しめると思いますよ。
そういう方にこそ来て欲しいですし、安易な方が来てボルトが増え過ぎたら楽しみが半減しますので。

具体的に登ったルート
狼煙台エリア
・一進一退(5.7、ワイド、10m)O.S.アップ
・影法師(5.8、ワイド、15m)O.S.
・天邪鬼(5.9、ワイド、40m)O.S.
(もともと、2ピッチのルートを繋げて。ヨセミテ的な充実感。下の写真2枚。)

ちなみに、最近はなんだか暖かく、11月なのに寒くないですね。

綺麗に登ること、楽に登ることは、同じではない?

11月2日(水)の昼は、ランナウトにてムーブ講習。
今回は、西国分寺の女性KDさん、講習初参加の男性ANさん。

今回のお2人は、クライミングの経験はほどほどあります。
一見、バランスの良い人らしく、“体のフリ”という最初の核心は突破しております。

しかしながら、なぜか初心者グレード(5.10a、5.10bくらい)が突破できず、ムーブ講習を打診されてきた方々。

「本人からすると何か1つ決定的なコツでも?」と、求めたいところでしょうが、クライミングのコツは無数です。
闇雲に登ってどんどんとコツを吸収する方(木登り上手の子どものように)、教わらないと力任せになってしまう方。

前者の方には、ムーブ講習は不要。
後者の方には、初心者のうちに良い癖を付けることをオススメしたいものです。

今回の方々は、丁度その中間くらいでしょうか。
例えば、
・“体のフリ”は出来ているが、ときどき逆方向に振っている
・腕は伸ばしているが、腰を壁に近付ける意識がない
・足を高く上げすぎたりして、腰は壁から離れ気味
・全身の力は抜けているようだが、ホールドは強く握り締め過ぎ
などなど沢山の改善点が。

一見、バランス良さそうで綺麗なんですが、本人はそんなに楽して登れていないという状態。
講習に参加して良かったと思いますよ。 
具体的な講習内容
・肩の脱力
・指の脱力(オープンハンド)
・腰を壁に近付ける(垂直以上の壁では、胸を反らして腕を伸ばすことと両立する)
・超基本ムーブ“ダイアゴナル”について

さてさて、3週間後に第2回を決めました。
頑張って覚えて行きましょう。

ガイド登山と講習

11月1日(火)は、越沢バットレスにてマルチピッチ体験講習。
今回は、常連女性のKKさん。
KKさんは、長らくジム講習だけを受講してきましたが、先日の天王岩で岩場講習に初参加。
続けて今回は、マルチピッチ体験です。

KKさんは、他のガイドの元で色々なバリエーションルートを体験しております。
「そんな方が、なぜ講習?」と思うかもしれませんね。

「ガイド登山というのは、お客様を登頂させるのが目的で、お客様を育てるのは副次的なもの」
という前提は、ガイド登山を知らないと理解しづらいことでしょう。
今回は、その点について少し話してみます。
たとえば、天気などで敗退が一瞬よぎるような場面でも、ガイドは敢えてお客様にそのことは伝えないことが多いです。
伝えるとしても、「少し大変ですが、行きましょう」と結果のみを伝えたり。
(例外のケースは、いくらでもありますが)

まず、お客様がガイドを強く信頼していただけるなら、その方が円滑に回ります。

さらに、お客様は登山の判断から開放されて、自分のことだけに集中できます。
たとえば、自分の体力維持のために行動食を食べること、危険箇所を気を付けて通過すること、今後の行程に関する見通し。

つまり、ガイドというのは、全体の判断をしつつ、お客様にはプレッシャーをなるべくかけず、さらにお客様にすぐ役立つアドバイスや注意点を促して集中させる、という業務を行っています。

まして、雪山やバリエーションルートのガイドは、その最たるもの。
ロープワークは難しいので、ほとんどをガイドが行います。
お客様は、ガイドと一瞬離れる際にやるべきロープ作業を指示され、それを実行しながらガイドを追います。

この方法が、“最も弱いお客様”を“最も難しいルート”に“できるだけストレスなく”登らせるため、最善という訳です。
私自身も、富士山でガイドをしている際、本当の初心者をマルチピッチにお連れする際などは、このことを意識しています。
お客様は、本当に登れるかの瀬戸際だったりするので。
そして、このガイド登山という方法が、自分自身では絶対に登れないはずの山を登るための良い方法であることは知っております。
もちろん、それが夢を与えるほどの仕事になりうることも。

ただ、私は“最も弱いお客様”にも簡単なバリエーションでも自力で登る可能性は捨てて欲しくないし、それを教える方が10倍好きですね。
そして、他のガイドなら「一生ガイド登山が良いんじゃないですか?」と勧められるようなお客様が、少しづつでも自分で考えられるようになることに、夢を感じます。
KKさんが、このままガイド登山を続けるのはもちろん構いません。
それで、色々なルートに連れて行ってもらうことも、きっと素晴らしいのでしょう。

ただ、僕はKKさんの可能性を広げる方に集中していきたいと思っております。

具体的な講習内容
1ピッチ目のⅢ級を2回登ってから、3回目にそのまま一般ルート(3ピッチ)をトップアウト。
・ギアラックの整理方法
(「ハーネスの前列を、ヌンチャクや回収ギアだけのために空けておく」など)
・カムの回収方法
・カウテールの作り方
・コール無し(コールが聞こえない場合)の流れ

ちなみに、ガイドの仕事は私には難しすぎるというのもあります(笑)。

本格的なアルパインルートのガイドとか、出来る気がしません。
興味があれば、素晴らしいガイドの面々を紹介いたしますよ。