9月19日(火)、20日(水)は、1人で沢登りシーズン3本目。
新潟の三国川野中沢のタキ沢。
<林道終点>
前回の米子沢で、だいぶ勘戻しも出来たので、本気山行っぽく計画。
遡行図(沢における記録、トポに相当する役割もある)は、最近行く前は見ないので、計画段階が肝です。
<しばらくは穏やか>
気にしている点を幾つか。
①沢の長さ、標高差
核心らしい核心が無く、スイスイ登れたとすれば、大体の時間が読めます。
<大滝を巻く>
②傾斜
傾斜が強ければ、小滝が頻繁に現れるか、30mクラスの大滝が現れるのが常です。
単純に急なゴーロが続く、ということは、何故かあまり無い気がします。
<引き続き、穏やか>
③両岸の傾斜
両岸が岩場マークでなくても、急傾斜なら似たようなものです。
雨天時のエスケープ場所は限られ、高巻きも困難or不可能といったケースが増えます。
<左岸は、この後スラブ帯が続く>
④幕営適地
②、③ともに傾斜が緩いところがベストですが、半日くらいに渡ってそういう場所が無いであろう沢は、緊張感が高いです。
<沢そのものは、傾斜が緩い>
⑤ツメの長さ
慣れた山域なら、地形図からツメの長さを想像しておきます。
「たぶん、この辺から水量が減って来て・・・。ここからは水流沿いも尾根沿いも変わらないぐらいヤブ漕ぎだろうから・・・。この山域だと、この距離で何時間くらいのヤブ漕ぎだろうか・・・。」
<左の暗いチムニーを行く>
⑥稜線の登山道の有無
よく整備された登山道なら、暗くなっても下山できます。
稜線に何も無ければ、沢を下りるにせよ、ヤブ尾根を下りるにせよ、登山道に出るまで本気は続きます。
<小さく高巻く>
⑦集水面積
読んで字のごとく、という概念です。水量の予測が出来ます。
<また高巻いた滝>
次に、この項目の何をレベルアップさせて、何を現状維持にして、という具合に自分の好みと相談しながら地形図から沢をリストアップして行きます。
今回で言えば、
「1人でリードギアは持たないという条件なので、②と③を両方レベルアップさせると多分登れないだろう。やるとしたら、片方のみ。」
「日帰り+予備日1日、という条件なので、沢そのものを難しくしたら、行程は短くないとな。」
「前回が人気ルートだったから、稜線に登山道が無いところで冒険気分を満喫するのは良さそう。」
「翌週に長期休みを取ってあるし、今回練習がてらビバークするのも最悪よしとするか。」
という具合。
<左右が急峻な源流部>
で、今回選んだのがタキ沢。
①~⑦の条件的に、どんなものかは気になる人は地図を見てくださいませ。
<ヤブ漕ぎに突入>
沢そのものは大変楽しく、1人で楽しめる程度の小滝やミニゴルジュが盛り沢山でした。
ボルダージムで、変化に富んだ6~7級をサーキットトレーニングをしているような感覚です。落ちちゃダメな7級も、ちょくちょく出てくるけど。
そう言えば、5mくらいの小滝で抜け口でフォールして釜にダイブしたのは痺れました。もちろん、落ちても大丈夫だとは思った上で、それでも落ちたくないと恐々ムーヴを探っておりました。最後に、勝負の立ちこみを掛けたらバランスを崩して・・・、という具合。
ただ、かなり困難そうな大滝が2本あって、これは直下に行くだけでも大変だったので、早々に高巻きました。
また、稜線に登山道が無いせいか、中盤以降は全く残置物も見当たらないクリーンな状態です。私が、1本捨て縄を残してしまいましたが・・・。
<小兜山の山頂は、かなりのヤブ>
10時入渓ということもあって、半ば予想通りヤブ尾根下降中に暗くなり、登山道まで辿り着けず。
久々に、セルフビレイを付けたままでの就寝でした。
翌朝、1時間ちょっとで裏巻機の登山道に着きましたが、これがまた悪くてビックリ!
暗い中で、「登山道だし。」と下山を強行していたら事故ってしまいそうでした。
<ビバーク明けで、登山道到着>
ちなみに、この項目を選ぶ作業って、ジムのルート作りに似ているような気がするんですよね。
(年間10本強くらいしか作らないし、ジムスタッフやプロセッターに比べたら素人みたいなものですが。)
私は、最初に自分の中で、5.10aぐらいのルートをイメージしておきます。
①ホールドの掛かり
(ガバ→インカットしているが、やや細かいorややスローピー、など)
②スタンスの配置
(体重の乗せ易さとホールドの効かせ易さを両立できる位置(足自由で置きたくなる所)→両立に工夫が要るor一方を捨てざるを得ない)
③ムーヴのパズル要素
あえて単純なムーヴの組み合わせだけで、真っ向勝負力を問うか。
そのグレード相応の人がやって、省エネを思いつく人もいれば、思いつかずに強引に突破する人もいるぐらいにするか。
特定のムーヴで無ければ、突破不可能な設定にするか。
オブザベ段階で思いつかなくても、行けば勝手に身体がそうなる“誘導的”な設定にしてあげるか。
④レストポイント
顕著なものを残すか、一定の難しさが続く中でどうにか頑張ってレストしてもらうように作るか。
⑤長さ
ルートを蛇行させて実際に長さを出したり、ムーヴ要素でグイグイ進めずに長く感じさせる設定にするか。
⑥終盤
最後をレストしにくい設定にして、持久力や省エネ能力、あるいは土壇場の踏ん張りを試す設定にするかどうか。
他にも、あると思いますが。
そして、沢とルート作りが似ているなんていうのは、誰に共感を求めているんだか自分でも謎です。
<裏巻機渓谷は、かなり厳しそうな印象>
全部をちょっとずつ悪くすると、グレードが跳ね上がります。
1つか2つを選んで悪くするぐらいで、5.10b~5.10cが作れるかな、と考えています。
それが上手く行ったか否かを試して反省の機会にするのは、誰かに登ってもらうことになる訳です。
<「増水時は渡渉不可」と書いてある場所。なるほど!>
今回の自分の計画は、まずまずでした。
予想より難しかったけれど、許容範囲でした。
山行計画って、なかなか創造的な遊びですね。
<裏巻機側の林道に、ようやく下山>