2012年3月9日金曜日

一ノ沢左稜~シンセン岩峰~東尾根(山行中の判断)

3月8日(木)、9日(金)は、自分の山行で谷川岳へ。
K口さんと。

順を追って、山行の流れをお見せします。
自分の山行では、判断することが沢山。

今回は、それを紹介します。
(朝5時で暗い一ノ倉沢出合。ここから、超雪崩危険地区に一瞬だけ踏み込む。独特の緊張感が漂う。)

今回は、谷川岳のバリエーションルートです。

谷川岳には、無数のクライミングルートがあります。
その中で、初級コースとして人気が高いのが東尾根!

ですが、その東尾根は一般的には、上半分だけが登られます。
理由は、
「その部分が美しい雪稜だから!」
(一ノ沢出合から、日の出とともに逃げるように左稜へ。本日は、雨上がりにて、沢筋は雪崩跡多数。しかも、本日の雪崩も多数。長居は禁物です。)

が、しかし。
その下半分にも、侮れない岩場があります。
それが、シンセン岩峰。

細い尾根上にある、高さ5m~10mくらいの8つほどある岩峰がそれです。

以前から、気になり続けていましたが、ようやく行く機会に恵まれました。
ご想像の通り、このルートはマイナーです。
しかし、長く山をやっている人なら、聞いたことくらいはあるルート。

とはいえ、
「面白い気がする!」
「ダメなら敗退、簡単すぎたらそれはそれ!」
という気持ちで、意気揚々と計画したのです。

ルート図はありません。
最大の情報源は、パートナーの持ってきた航空写真です。(東尾根のもの)

とりあえず、アプローチはロープを出さない程度の簡単なクライミングです。
まだ余裕。
むしろ、一ノ倉沢や幽ノ沢から聞こえる全層雪崩の爆音の方が、緊張感を煽ります。
下の写真では分かりにくいですが、この日は全層雪崩がしょっちゅう起こります。

しかも、全層雪崩の寸止めとも言える大きな亀裂も多数!

さすが、雪崩の名所、一ノ倉沢です。

さて、いよいよシンセン岩峰。
特別細い雪尾根(ナイフリッジ)の歩き、数メートルだけど怖い下り、が主体。
難しくはないが、リードよりもフォローの方が危険度が高いことも多い。

とはいえ、やっぱりリードはルートを考えながら進むので大変。
リードを交替しながら進んで行きます。
ただ、やっと晴れ間が見えました。
やっぱり、格好いい!
岩峰に雪が乗ると、雪庇やキノコ雪ができやすく、上を歩くと崩れることがあります!

相当慎重に、雪を崩したり固めたり。
それでも、最後は祈るように一歩を踏み込んでみたり。

プロテクションは時々取れたので、ロープは割と信頼しています。

それでも、雪が崩れて滑落する自分の姿を想像して進むのは、なかなか心臓に悪いクライミングです。
午後3時。
目的の下部を終え、東尾根のスタート地点です。

ここが、今夜の予定した宿泊場所なので、余裕を持って達成。

ただし!
今回は、一泊ながらテントなしでツエルト、寝袋なしのビバーク計画。

お陰で、ザックは軽い!
クライミングは順調でしたが、今夜が寒い・・・。
やっぱり、そのままビバークせずに登り続けることにしました。

判断理由としては
・ここから先は、入門バリエーションだし、夜でも登れるだろう
・どうせビバークしたら、翌日は疲れてるので、今登ってヘロヘロになっても同じ
・このあと、雨でも降りそうな気配。(雪崩リスクが上がって、沢へのエスケープルートも危険になる)
・今日中に下山できなくても、山頂に避難小屋はある
・天気も大荒れにはならなそう
・登りきれなくて山頂直下でビバークしても、死なない自信はある

といった所。
疲れているので、慎重に慎重に。

ただ、想像以上に雪庇やシュルント(雪の裂け目)が大規模&多数。
今年の豪雪と、最近の雨続きの影響でしょう。

「雪庇が、予想以上に大きく崩れたら、死ぬかも」という恐怖感は感じながらも、半ば野生的な勘で行動。

「ここは、ちょっと危ないけどロープ出せないよね。」
(支点が取れない、雪庇が大規模に崩れたらどうせ助からない、などの理由)
なんてことも言い合いながら行動。

今日の東尾根は、初級じゃないなあ。
とはいえ、ゆっくりながらも高度を稼ぎ、夜9時に谷川岳山頂到着。

登れて良かった、という気持ち半分。
生きてて良かった、という気持ち半分。


「無事に登れて良かった!」

今回の東尾根は、こういう気持ちにさせられます。
9時半に、快適な避難小屋へ到着。
寝袋なしでも、ここなら横になって休めました。

そして、翌朝は天神平ロープウェイめがけて下山。

本当は、ロープウェイは使わずに、西黒尾根を歩いて下山予定でした。
が、今回の雪の状態だと、シュルントがあちこちに隠れているので、雪壁を下るのは恐怖!

下降は、登り返すことが難しいので、出だしでよく考えて!
判断にまよいあぐねたら、最後は安パイを取っておくのもアリですね。
行動記録
1日目:(ガスときどき晴れ)
3:10 スキーセンター出発
4:40 一ノ倉沢出合(ハーネス、アイゼンを装着)(~5:00)
6:00 一ノ沢左稜取り付き
(シンセン岩峰は、全4ピッチのリッジの登下降、1回の懸垂。)
15:00 シンセンのコル
(東尾根でも、2回ロープを使用)
21:00 オキノ耳
21:25 トマノ耳
21:30 肩の小屋

2日目:(山頂では雪、麓は雨)
7:00 出発
8:40 天神平ロープウェイ到着

難しいというよりも、不確定要素の多い山行でした。

長らく登りたかったルート。
もちろん、登れて満足。
ただ、もう少し雪が安定したときに来た方が気持ちよかったかも。

その一方で、判断要素が多い山を楽しむ自分も居たり・・・。

一筋縄ではいかない世界です。