5月24日と、かなり前の話になりますが、桂くんと七賢の岩場。
バシルーラ(5.12a、核心はボルトルート)をオンサイトしたのですが、自分でもびっくりの3時間トライになってしまいました。
ボルトルートでは、自身最長時間の記録だと思います。
残念ながら明確な反省点はなく、再び繰り返す可能性も無きにしもあらず。
顛末を書き留めておきます。
ルート詳細に言及するので、オンサイトしたい人は読まないでください。
①事前準備
下部は易しいスラブ、核心部がハングしており、ハング面に入らないとホールドが見えづらいことが一目で分かった。
すると、ハング面に入って上部観察(頑張ってレストしながら数分観察)、スラブ面に戻って大レスト(完全回復するまで10分以上休む)を何度も繰り返す展開が予想される。
この時点で、1時間越えの可能性は十分にあるルートだと分かった。
②ウォームアップ
嫌な予感がプンプンしたため、本気トライの時間短縮のために工夫することにした。
バシルーラと下部が共通するであろうNPでトップアウトする凹角ラインでアップ(5.8ぐらい)。
さらに、隣の「遠雷の木曜日」(5.8、ボルト)も登る。
これらのラインを登りながら、バシルーラの核心パートを遠目に眺めて、可能な範囲でオブザベしておく。
③地上でのオブザベ
幸い、ハングしたカンテラインなので、カンテと相性の良いホールドの向きがあった場合と無かった場合で、何パターンかムーヴをイメトレ。
が、あまりに地上からは遠いため、ホールドの予想はやはり外れた。
しかし、このイメトレは役に立ったとは思う。
ちなみに、ある程度までオブザベが当たったのは、各ボルトにおけるヌンチャクの伸ばし具合ぐらいか・・・。
④トライ
ルートが日陰となり、状態が比較的良くなってからトライ開始。
下部のスラブは、リピートなので順調にこなす。
ハング下(正確には右下)が予想通り居心地が微妙なレストポイントで、完全回復するのに時間が掛かる。
ここから、核心部まで3mぐらいトラバースして、ハング面に上体だけを入れて、上部観察。
疲れたら、3mをトラバースして戻り、居心地の微妙なレストポイントで完全回復を待つ。
これを、4回ほど繰り返す。
大体の作戦が定まり、核心部へ突入。
無事にボルト2本分のハング面を越え、ノーハンドで立てる外傾テラスへ。
そこから、3mほどの垂壁からスラブへのマントル(以下、スラブ系マントル)があるが、ここにボルトが無いのに、予想より遥かに難しい!
最後にクリップしたのはハング面のボルトなので、外傾テラスに立った時点で既に足元を越えている。
何度もマントルにトライするが、できそうなムーヴが見えない。
そして、かなりのランナウトになっているため、いかに下がハング面でロングフォール許容だとしても、9割行けそうなムーヴじゃないとトライできない。
さらに、外傾テラスに戻っても、シューズを一旦脱いだりするのも物凄く体勢的に厳しいものがあり、時間ばかりが過ぎていく。
かといって、スラブのスタンスが細かく、5分もシューズを履き続けているとスタンスの乗り心地が悪く感じてきて、一旦シューズを脱いで汗を乾かさざるを得ない。
何度もビレイヤーに謝りつつ、自分でも時間の読めない行きつ戻りつを繰り返す。
ビレイヤーとしても、「仮に3時間半のトライ」が見えて来たら、敗退を促すつもりだったそうだ。
そして、行きつ戻りつの高度を十センチずつ上げていき、ある時「たぶん登れそう」というムーヴが見出された。
落ち着いて外傾テラスに戻り、「次こそは行けそうです。」と宣言して、突っ込む。
そして、10%のフォール確率を許容したマントルを達成・・・。
ようやく終了点にクリップすることができた。
⑤トライを終えて
ハング面の核心部における行きつ戻りつに時間が掛かることはビレイヤーも想定しており、1時間半程度まで(クラックで、まぁまぁ時間が掛かったときぐらい)は、お互いに折り込み済みのオンサイトトライだった。
しかし、上部のスラブ系のマントルは、ボルトが打たれていないことから易しいだろう(せいぜい5.9の核心ぐらい)と思い込んでいた。
実際、フォールしても盛大にハング面に落ちるだけなので、5.9ぐらいなら恐々越えられるだろうと思っていた。
もっと言うと、ボルトルートは人為的にボルトを打っているので、「5.12aでランナウトするとしたら、ハングの5.10b、スラブで5.9まで。」などと言う相場感をオブザベに当てはめていた。
が、実際には体感で5.10bくらいのスラブ系マントルだと感じた。
正確な時間は分からないが、ここで1時間以上の行きつ戻りつとなったことが、最大の誤算であった。
ちなみに、外傾テラスにしゃがんでフォールすれば、敗退することは可能であった。
(ビレイヤーとしても、これ以上長くなる場合は、それを促すつもりだった。)
⑥感想
トライ中は、「ボルトルートにしては、ちょっと厳しめのボルトだよー。」などと文句を言ってしまうが、実際には大変よくあることなので、登る側も覚悟を持ってトライする必要がある。
実際、危険になる前にトライを辞めることも可能なので、ルートが危険なわけでも、初登者が悪いわけでもないとも思う。
初登者が、例のスラブ系マントルを5.9以下に感じたからボルトを打たなかった可能性だってあるし、「5.12aなんだから5.10bぐらいはスラブでもランナウトでしょ。」と思う可能性だってある。まして、僕は185cmと長身なので、狭いムーヴで辛く感じることも頻繁だ。
つまり、「5.12aでボルトが無いスラブだから5.9以下」という僕の見立て自体も、ハズレの可能性があることは、僕自身もよく知っている。
一方で、今後こういう見立てを使わずにボルトルートのオブザベをするかと言われたら、答えはノーだろう。
見立てが当たればラッキー、外れても敗退すれば良いので命に関わる問題ではないからだ。
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つまり、明確な反省点はありません。
ルートが悪いわけでもなく、今後もこういうルートには出会うでしょう。
ここまでの長時間トライを積極的に行いたい訳では決してないのですが、外傾テラスで敗退するのが正解だったかと言えば、「それはビレイヤーとの相互理解による」ということになるでしょうし、今回に関してはトライを続けて良かったと言ってもらえました。
(桂くん、ありがとう!)
一方で、単なる粘りではなく、オブザベとかを磨いて、もうちょっとスマートにオンサイトできる確率を上げたいなぁとは思うので、今後のトレーニングの問題意識として行きましょう。
<これも本文とは別日>
<これも・・・>