2019年6月17日月曜日

リングボルト脱落での減速効果を期待するか?

6月9日(日)は、雨天にてロープワーク講習。
新規男性SUさん、新規男性IKさん。
新規の方で、本チャン系の方だとよく話題に上がるのが、リングボルトやハーケンなどの信頼度について。
これについては、あらゆる所で動荷重への信頼度の低さが謳われておりますが。

とはいえ、クラックの固め取りと同様、沢山あれば「さすがに1本ぐらいは止まるんじゃないか?」という期待を寄せてクリップしてきた人も多いと思います。

そんな中、よく講習生が仰るのが、
「1本目が抜けたとしても、それが墜落速度の減速になるので、2本目への荷重は相当軽減されるんじゃないか?」
という話。

大雑把に、検証してみましょう。
<図1、1m間隔でリングボルトが打たれていた場合>

図1は、クライマーは1mのランナウト状態にあります。
大体、ボルトが足元になるぐらいで、ハーネスのエイトノット~ヌンチャクのカラビナまでが1m強でしょう。

そこでフォールすると、クライマーは最低でも2mは自由落下します。(ビレイヤーのロープ弛みを0mと仮定。)

で、ここでリングボルトが抜けたとしてます。
この際、減速の具合がどの程度かは、リングボルトがどの程度持ちこたえたかに依存します。
そして、僅かとは言え、減速されてはいるのでしょう。
10%とか20%ぐらいの減速なら、クライマーがフォール中に実感することもないかもしれません。

ここでは、極論として
①速度が0になった場合(あり得ないけど)
②速度が半減した場合
を考えます。

どちらの場合も、リングボルトが抜けた場合なので、+2mをフォールします。

①の場合であれば、ちょうど1本目と同じだけの速度で2本目に荷重することになります。
②の場合であれば、1本目のときよりは高速で2本目に荷重することになります。

(空気抵抗を無視すれば、高校物理でも速度は計算できるはずですが、本題とは逸れる上に、物理アレルギーの人もいるでしょうから割愛。)

という訳で、これだけ大きめに減速スピードを見積もっても尚、
「2本目が動荷重に耐えられなければ、結局は抜けるはず。」
という結論に至ります。
<図2、クラックの固め取り後の、フォール>

図2は、固め取りして突っ込んだケースです。
どちらのカムも、「バチ効き」とは言い難いです。

ただ、「1本目と2本目が近いので、1本目で仮に十分な減速がなされれば、2本目がプアプロでも行けるんじゃないか?」と思う人もいることでしょう。

私は計算はしませんので(笑)、興味がある人は計算してみてください。
例えば、減速10%、30%、50%、100%(速度0、というあり得ない仮定ですが)とか。
<図3、クラックの固め取り後の、テンション>

図3は、固め取り後のテンションです。

もちろん、フォールでは抜けるけれど、静荷重なら抜けないということはありますから、これ自体は意味があることです。
で、もしここで1本目が抜けると、2本目には1mフォール相当の動荷重が掛かります。

この場合、減速という考え方は当てはまらず、そもそも1本目が抜けた時点でフォールが始まるので速度0からのスタートです。


さてさて、皆さんどう考えるでしょうか。
私の場合は、「プアプロが抜けたことによる減速」は無視して安全管理を考えるという結論に至りました。

・動荷重に耐えるか、静荷重に耐えるか?
・動荷重に対して、何%ぐらいの信頼度か?
という2点のみで、シンプルに評価した方が、リード中の自分の思考回路がシンプルになるように思います。