2012年10月16日火曜日

アルパイン系のマルチ、スポーツマルチの棲み分け

10月15日(月)は、越沢バットレスにてマルチピッチ体験講習。
なんと、今週までに7週連続で岩場講習を受講した常連男性NMさん。
そして、女性登山ガイドのカリスマ。渡辺サチさん。
さて、本日は奥多摩最大の岩壁、越沢バットレスです。
高さ70mを誇り、マルチピッチの練習場としては、関東有数のものでしょう。
高度感も抜群、岩も堅い。
この壁、私も学生の頃から通っておりますが、当時は残置ハーケン、残置のリングボルトで登る、いわゆる“本チャンのための練習場”でした。

それが、最近はチラホラとハンガーボルトが目立ち、さながらフリーマルチの岩場みたいになってきました。
(城山南壁、など)
これ、喜ばしい事と考えるか、かなり微妙な問題です。

支点が良くなる、というのは一見すると良いことです。
が、アルパインとスポーツクライミングの違いって、そこなんじゃないでしょうか?

なんでも安全にすれば良いってもんじゃない。
「それを安全に登れる実力を付けてから、トライしろ!」

ってのが山でしょう。
つまり、

スポーツクライミングならば、今風の安全なボルトを打って、思いっきりトライすれば良し。

アルパインクライミングなら、危険も含めてコントロールする。
本当なら残置ハーケンも全て撤去して、未踏の岩壁を登るような気持ち&技術でトライするのが、アルパインクライミングって遊び方です。
ってことは、岩場ごと(エリアごと、ルートごと) の棲み分けが大事になります。

確かに、何にも支点が取れないようなスラブの大岩壁、ハングした石灰岩は、スポーツマルチにしないと資源の無駄でしょう。
ただ、凹角やクラック沿いを攻めるクラシックなラインは、残置を撤去して本来のアルパインクライミングルートとして再生した方が、より楽しいものとなるでしょう。
で、この岩場の立ち位置は微妙です。

・歴史的な経緯からすれば、アルパインの岩場なので、スポーツマルチ的になるのは残念。
・とはいえ、三つ峠、ミズガキなどに比べて、クラックが少ないので、プロテクション技術が難しい。残置を総撤去すると、今より相当厳しい岩場になる。
でも、私は越沢バットレスは、アルパインの練習場であり続けて欲しいと思っております。

時代の流れか、越沢でもカムを携行する初級者が増えてきました。
(残置も併用して使っている人が多いですが。)

私は、いつか残置支点のない入門ルートが増える日も来るかもしれないと、夢を描いております。

ボルトを打ったのがどなたか存じませんが、これ以上は打ちたさないで欲しいです。
できれば、本人が打ったボルトを抜いて頂けると、喧嘩とかにもなりにくくてベストです。

過去に、私も残置を抜いて喧嘩になったこともありますので。
でも、懸垂下降支点を整備してくれている方、トイレ&アプローチを整備してくださるキャンプ場の方には、本当に感謝です。

未踏の岩壁をイメージする話と、矛盾するようですね(笑)。
が、毎週何十人もがアルパインクライミングを練習する環境には、この手の整備だけは欠かせないと思うんですよね。
具体的な講習内容
・スリングの収納方法
・アルパインクイックドローの作り方
・ギアラックの整理方法
・コール無しの流れ
・カムの回収方法(苦労しやすいパターン)
・カウテールの作り方
・懸垂下降の安全確認
などなど
マルチピッチ体験2回目のNMさん、とても落ち着いて行動できていたので、ビレイ点のポイントや、ロープさばきなどについても学んで頂けました。