2012年6月1日金曜日

残置無視は、トレーニングじゃない

5月31日(木)は、越沢バットレスにてマルチピッチ体験講習。
以前にも体験講習を受講した、女性YSさん。
越沢バットレスには、残置支点が数多く残っております。

残置、というのは以前のクライマーが残した支点のことです。
信用できそうなものから、ボロボロそうなものまで、色々あります。
当然ながら、初登者の頃には残置なんてありません。

その後の再登者達が、

・回収するつもりが、出来なくなってしまう
・後から登る人にわざと残す

などの理由で、増えた結果です。

で、実際のバリエーションルートでは、残置にクリップするだけで登れてしまうこともあります。

悲しい現実ですが、「あるんだから使いたい」ですよね。
で、本来のアルパインクライミングの趣旨からすると、

「こういう岩場には、残置支点なんて無い方が、よりアルパインっぽい」

という話です。

残置あるなしで、
自力で壁を登っている感が全然違います。
ただ、ある物を抜くというのは、時間的にも精神的にもエネルギーが要ることです。

たまに、抜いたルートを雑誌などで発表して、叩かれたりしながら頑張って主張を述べる人がおりますが、本当に偉いと思います。
僕も、以前に抜いたこともありますが、今は口論までするガッツは沸いてこないので、ほどほどです。

まだまだ、そういう発想を受け入れがたい人も居るってことです。
そこで、残置を使わないという方法を、残置無視と言います。

一見すると、
“どこか、海外の難しいルートを狙うための過酷なトレーニング”

みたいに勘違いされがちです。

が、本当にやってみると、意外なほど面白い。

越沢バットレスや三ッ峠が、
「もはや、これがアルパインそのものじゃない?」
ってくらいに楽しめます。
残置無視は、僕にとってはトレーニングじゃない。
その岩を登った感を楽しむための、重要な方法だと思います。

当塾では、
“自力で登った感を伝えること”

が、重要な目的ですので、アルパインっぽい岩場は残置無視で行っております。
過去にも書きましたが、本当は無視するのも労力が要るので、残置が無くなるのが一番良いんですけどね。

「登山道じゃないんだから、自分でプロテクション作れないような人は来る資格ないですよ。」

と、ここまで言ったら、今の日本じゃ言い過ぎかもしれません。
でも、安全の意味でも、本来はそうじゃないとダメだと思いますよ。
具体的な講習内容
<取り付きにて>
・スリングの収納方法、ギアラックの整理方法などの確認

<1ピッチ目を1度登って懸垂してみて>
・コールあり、コール無しの流れ
・カムの回収で、よくハマるパターン

<実践マルチピッチ>
①一般ルート(3P)
②第2スラブ(3P)

マルチピッチ体験が2回目のYSさん。
段々とペースが上がって来たので、本日は2本登ることが出来ました。